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WISC-Vの結果の見方|5つの指標とIQ・療育手帳判定のズレ

WISC-Vの結果の見方|5つの指標とIQ・療育手帳判定のズレ

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発達の相談をしていると、ある日「一度、知能検査を受けてみましょう」と言われることがあります。そして数週間後、たくさんの数字とグラフが並んだ結果票を渡されます。

ところが、その場での説明は15分ほど。家に帰って紙を見返しても、「言語理解 92」「処理速度 71」といった数字が何を意味しているのか、さっぱりわからない——そんな経験をしている方は少なくないと思います。

この記事では、WISC-V(ウィスク・ファイブ)の結果票の読み方を、専門用語をできるだけかみくだいて整理します。あわせて、多くの親が引っかかる「検査のIQと療育手帳の判定が食い違うのはなぜ?」という疑問にも答えます。

結論から言うと、いちばん大事なのは全検査IQという1つの数字ではなく、5つの指標の「デコボコ(差)」です。ここが読めるようになると、結果票は「わが子の取扱説明書」に変わります。

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WISC-Vとは?何がわかる検査なのか

WISC(ウィスク)は、児童向けウェクスラー式知能検査の略称です。世界でもっとも広く使われている子ども向けの知能検査で、WISC-Vはその第5版にあたります。日本版は2021年に刊行されました。

おおまかな特徴を整理すると、次のようになります。

WISC-Vの概要
対象年齢 5歳0か月〜16歳11か月
わかること 全検査IQ(FSIQ)と、5つの領域ごとの指標得点
実施方法 検査者と1対1。積み木・絵カード・口頭の質問などに取り組む
所要時間の目安 全検査IQまでなら約45〜60分、5つの指標まで出すなら約65〜80分
受けられる場所 医療機関(発達外来・児童精神科など)、児童相談所、教育センター、大学の相談室など

大事なのは、WISC-Vは「発達障害を診断する検査」ではないということです。あくまでその子の認知のしかたの特徴を測るもので、診断は医師が行動観察や生育歴などとあわせて総合的に判断します。

💡結果票に「発達障害です」とは書かれていません。書かれているのは、「この子はこういう情報の受け取り方・処理のしかたをしている」という地図です。診断名を探すつもりで読むと肩透かしを食らうので、最初にここを切り替えておくとラクになります。


結果票の見方|全検査IQと5つの指標得点

結果票には数字がたくさん並んでいますが、まず見るべきは全検査IQ(FSIQ)5つの主要指標得点の6つです。

まず「数字の意味」を知る|平均は100

全検査IQも各指標得点も、同じ年齢の子の平均が100になるように作られています。そして、平均から離れる度合い(標準偏差)は15です。

得点の範囲 おおよその位置づけ
130以上 非常に高い(同年齢の上位およそ2%)
115〜129 平均より高い
85〜115 平均の範囲(同年齢のおよそ7割弱がここに入る)
70〜84 平均より低い(境界域を含む)
69以下 非常に低い(同年齢の下位およそ2%)

つまり85〜115はごく普通の範囲で、「100じゃないから遅れている」という話ではありません。ここを知らずに結果票を見ると、96という数字を見て落ち込んでしまうことがあります。

5つの主要指標が示すもの

WISC-Vでは、次の5つの領域それぞれについて得点が出ます。ここがWISC-Vの心臓部です。

指標 ざっくり言うと 低いときに生活で出やすいこと
言語理解(VCI) ことばで理解し、ことばで説明する力 口頭の指示が入りにくい/説明がうまく伝えられない
視空間(VSI) 形やパターンを見て把握し、組み立てる力 図形や地図が苦手/板書の写しづらさ
流動性推理(FRI) 初めて見る情報からきまりを見つける力 応用問題や初めての場面でつまずく
ワーキングメモリー(WMI) 聞いた情報を頭に置いたまま操作する力 指示を途中で忘れる/暗算や聞き取りが苦手
処理速度(PSI) 簡単な作業を正確に素早くこなす力 書くのが遅い/テストが時間内に終わらない

右の列を見ていただくとわかるとおり、指標得点は「学校生活のどこでつまずくか」と直結しています。これが、結果票がただの成績表ではなく支援の手がかりになる理由です。

「信頼区間」と「パーセンタイル順位」も見ておく

結果票には、数字のとなりに90〜100(90%信頼区間)のような幅が書かれていることがあります。これは「本当の値はこのあたりにありそう」という範囲です。

知能検査の得点は、体調や集中の続き具合によって多少上下します。96と99の差に意味を求めないためにも、この幅を意識しておくのが大切です。

またパーセンタイル順位は、同年齢100人のなかで下から数えて何番目かを表します。たとえば25パーセンタイルなら「100人中、下から25番目あたり」という意味になります。IQの数字よりも実感しやすいので、こちらを見るほうがピンとくる方も多いです。

⚠️結果票にある下位検査の評価点(積木模様、類似、行列推理…など。平均10・標準偏差3)は、1つひとつの上下に一喜一憂しないほうがよい部分です。専門家でも下位検査単独での解釈には慎重で、まずは指標のレベルで読むのが基本とされています。


WISC-IVから何が変わった?

きょうだいや上のお子さんがWISC-IVを受けたことがあると、「前と項目が違う」と戸惑うことがあります。いちばん大きな変更点は「知覚推理」がなくなり、2つに分かれたことです。

WISC-IV(4つの指標) WISC-V(5つの指標)
言語理解 言語理解
知覚推理 視空間
流動性推理
ワーキングメモリー ワーキングメモリー
処理速度 処理速度

「見て把握する力」と「きまりを見つけて考える力」は別物なので、分けて測れるようになったということです。WISC-IVで知覚推理が低かった子でも、WISC-Vで受け直すと「視空間は低いが流動性推理は平均」といった具合に、より細かい像が見えることがあります。

また、WISC-Vには5つの主要指標のほかに補助指標(一般知的能力・認知熟達度・非言語性能力・量的推理・聴覚ワーキングメモリー)があり、必要に応じて算出されます。結果票に見慣れない指標名があったら、この補助指標のことだと思ってください。


数値より大切なのは「差」|デコボコの読み方

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

全検査IQ(FSIQ)は、5つの領域をまとめて平均したような数字です。ということは、得意と苦手の差が大きい子ほど、この1つの数字は実態を表さなくなります。

同じIQ100でも、中身はまったく違う

たとえば、次の2人はどちらも全検査IQが100前後になり得ます。

指標 Aさん Bさん
言語理解 100 125
視空間 100 105
流動性推理 100 110
ワーキングメモリー 100 80
処理速度 100 72

Aさんは全体的に平均どおり。Bさんは「話す・理解する力はとても高いのに、書く・覚えておくが極端に苦手」という子です。

Bさんのようなタイプは、面談では受け答えがしっかりしているため「できる子」と見られやすいのですが、実際の教室では板書が終わらず、口頭の指示を忘れ、宿題に何時間もかかります。そして「やる気がない」「怠けている」と誤解されてしまう。この誤解を解くための証拠が、指標得点の差です。

💡指標間に大きな差がある場合、専門家は「全検査IQで一括りに語るのは適切でない」と判断し、補助指標や個別の指標をもとに解釈することがあります。結果説明のときに「うちの子は差が大きいほうですか?」と聞いてみると、話が一気に具体的になります。

親が知りたいのは数字ではなく「手立て」

結果説明の場では、つい「IQはいくつでしたか」と聞いてしまいがちです。でも本当に持ち帰りたいのは、「では家と学校で何をすればいいのか」のほうです。

聞き方を変えるだけで、返ってくる情報はまるで違ってきます。

  • 「この子がいちばん助かる伝え方は、口で言うのと紙に書くの、どちらですか?」
  • 「一度に出す指示は、いくつまでなら入りそうですか?」
  • 「宿題の量や書く量を減らす配慮は、この結果から見て必要そうですか?」
  • 「学校の先生に伝えるなら、どの数字とどの言葉を伝えるのが効きますか?」

IQと療育手帳の判定がズレるのはなぜ?

「病院のWISCではIQ72だったのに、療育手帳の判定では中度(B1)と言われた」「その逆だった」——これは本当によくある話です。理由は主に5つあります。

理由①:使っている検査がそもそも違う

これが最大の理由です。療育手帳の判定でWISCが使われるとは限りません。児童相談所や知的障害者更生相談所では、田中ビネー知能検査V新版K式発達検査など、別の検査が使われることがあります。

検査が違えば、同じ子でも数値は一致しません。測っているものの重なりは大きいものの、まったく同じではないからです。「病院の数字」と「判定の数字」は、そもそも別の物差しで測った値だと思っておくと混乱しません。

理由②:判定はIQだけで決まらない

療育手帳の判定は、知能指数に加えて日常生活能力(食事・排せつ・着替え・コミュニケーション・安全の理解など)をあわせて総合的に行われます。

そのため、IQが境界の値でも、生活面の困難が大きければ重いほうの区分になることがあります。逆に、IQが低めでも身のまわりのことが自立していれば、軽いほうの判定になることもあります。

理由③:判定基準が自治体ごとに違う

療育手帳は法律で全国一律の基準が定められている制度ではなく、自治体(都道府県・政令指定都市)ごとに要綱で運用されています。表記もA・B、A1・A2・B1・B2、1度〜4度などバラバラです。

つまり「同じIQでも、住んでいる地域によって区分が変わりうる」ということです。引っ越しの際に区分が変わることがあるのはこのためです。

区分ごとの違いは、こちらの記事で一覧表にまとめています。

理由④:検査を受けたときの状態が違う

知能検査はその日その場での力を測るものです。人見知りが強い、寝不足だった、部屋の雰囲気が苦手だった——こうした条件で結果は上下します。特に処理速度は、疲れや気分の影響を受けやすい指標です。

また、2回目以降は「慣れ」によって点数が上がりやすいという性質もあります。前回より上がったからといって、能力が伸びたとは限りません。

理由⑤:全検査IQが、そもそも実態を表していない

先ほどのBさんのケースです。指標間の差が極端に大きいと、全検査IQは「高い部分と低い部分を打ち消し合った数字」になります。

判定する側は生活面も見ているので、「数字は平均域だが、生活の困難は大きい」と判断されることがあるのは自然なことなのです。

⚠️判定に納得がいかないときは、感情的に抗議するのではなく「どの検査を使い、生活面はどう評価されたのか」を具体的に確認するのが近道です。多くの自治体では再判定の申し出ができます。窓口で手続きを確認してみてください。


結果を学校・園でどう使うか

結果票は引き出しにしまっておくと、ただの紙で終わってしまいます。いちばん価値が出るのは、先生に「この子の説明書」として渡すときです。

伝えるのは「数字」ではなく「困りごと」と「手立て」

結果票をそのままコピーして渡しても、先生も読み方に困ってしまいます。おすすめは、A4用紙1枚に翻訳して渡すやり方です。

書く項目 書き方の例
得意なこと ことばで説明する力は年齢より高めです
苦手なこと 聞いた指示を覚えておくこと、素早く書き写すことが苦手です
起きやすい困りごと 指示を最後まで実行できない、板書が終わらない
お願いしたい配慮 指示は一度に1つ/板書はプリントか写真で/書く量を減らす

「配慮のお願い」まで書いてあるかどうかで、受け取られ方はまったく変わります。先生は「支援が必要らしい」ではなく「明日から何をすればいいか」を知りたいからです。

個別の支援計画に書き込んでもらう

口頭で伝えただけだと、担任が替わったときにリセットされてしまいます。個別の教育支援計画・個別の指導計画に文章として残してもらうことで、次の学年にも引き継がれます。


検査を受けるときに知っておきたいこと

どこで受けるかで、その後の使い道が変わる

受ける場所 特徴
医療機関(発達外来・児童精神科) 診断や意見書につながる。予約が数か月待ちのことも
児童相談所 療育手帳の判定に関わる。使う検査は機関により異なる
教育センター・教育相談室 就学相談や学校での配慮につなげやすい
大学の相談室・民間の相談機関 比較的早く受けられることがある。自費のことが多い

「何のために受けるのか」を先に決めておくと、場所選びで迷いません。手帳のためなのか、学校の配慮のためなのか、診断のためなのかで、受けるべき窓口が変わります。

検査前に、子どもへどう伝えるか

「テスト」と伝えると身構えてしまう子がいます。「パズルやクイズをして、○○ちゃんの得意なことを見つけてもらう時間だよ」といった伝え方をする方が多いようです。

また、当日の体調がそのまま結果に響くので、睡眠がとれている日・機嫌が安定している時間帯を選べるなら、そのほうが実力に近い結果になります。

次に受けるまでの間隔

同じ検査を短い間隔で繰り返すと、問題を覚えていることで点数が上がってしまいます(練習効果)。そのため、再検査までは一定の期間をあける運用が一般的です。どのくらいあけるかは機関の方針によるので、結果説明のときに「次はいつごろ受け直すのがよいですか」と聞いておくのが確実です。


よくある質問

Q. WISC-Vの費用はどのくらいかかりますか?

A. 受ける場所によって大きく変わります。医療機関で医師が必要と判断して行う場合は健康保険の対象になることがあり、子ども医療費助成が使える地域では自己負担がほとんどかからないこともあります。一方、大学の相談室や民間機関で自費で受ける場合は、報告書の作成料を含めて1万円台〜数万円かかることがあります。金額は機関ごとに異なるため、予約の際に必ず確認してください。

Q. 結果票のコピーはもらえますか?

A. 機関の方針によります。数値の一覧をそのまま渡すところもあれば、所見をまとめた報告書だけを渡すところ、口頭説明のみのところもあります。学校に伝える予定があるなら、申し込みの段階で「学校に見せたいので書面がほしい」と伝えておくと、書面を用意してもらいやすくなります。

Q. IQが平均以上なら、支援は必要ないということですか?

A. そうとは限りません。全検査IQが平均以上でも、指標間の差が大きい子は、教室で強く困っていることがあります。全体の数字ではなくいちばん低い指標が生活のどこに影響しているかで考えてください。数値が高いために「困っていないはず」と見られてしまうことは、むしろよくある困りごとです。

Q. WISCの結果があれば療育手帳はとれますか?

A. WISCの結果だけで決まるものではありません。療育手帳の交付判定は児童相談所などの判定機関が行い、そこで実施する検査と日常生活能力の評価をあわせて判断されます。病院で受けたWISCの結果は参考資料として役立つことがありますが、判定そのものは改めて受けることになるのが一般的です。

Q. 何歳から受けられますか?未就学児でも大丈夫?

A. WISC-Vの対象は5歳0か月〜16歳11か月です。それより小さいお子さんには、WPPSI(ウィプシ)や新版K式発達検査など別の検査が使われます。5歳前後は複数の検査の対象が重なる時期なので、どれを使うかは相談先の判断になります。


おわりに

WISC-Vの結果票は、はじめて見ると数字の羅列にしか見えません。でも読み方の順番さえわかれば、「この子は何なら伝わって、何がしんどいのか」を教えてくれる地図になります。

この記事でお伝えしたかったのは、次の3つです。

  • 85〜115は平均の範囲。100でないことに落ち込む必要はない
  • 全検査IQという1つの数字より、5つの指標の「差」を見る
  • 療育手帳の判定とズレるのは自然なこと。使う検査も、見ている中身も違う

そして、結果を受け取ったらそのままにせず、学校や園に「配慮のお願い」の形に翻訳して渡すところまでを一区切りにしてください。数字が支援に変わるのは、その一手間があってこそだと思います。

※制度・金額に関するご注意
本記事に記載の金額や制度内容は、執筆・更新時点の情報です。金額・条件は年度やお住まいの自治体により異なる場合があります。療育手帳の判定基準は自治体ごとに定められているため、最新の情報は必ずお住まいの市区町村の窓口や公式サイトでご確認ください。


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