きょうだい児が抱える気持ちと親にできること|障害児家庭のリアルな工夫
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「きょうだいには、ずいぶん我慢をさせてしまっているな」
「気づいたら、いつも障害のある子の予定でわが家の一日が決まっている」
障害のある子を育てていると、そのきょうだい——いわゆる「きょうだい児」のことが、ふと心に引っかかる瞬間があります。手がかからない子ほど後回しになりやすく、それを本人が察して、さらに言わなくなる。この静かな連鎖が、きょうだい児支援でいちばんよく語られる問題です。
わが家にもきょうだいがいます。正直に言えば、何をするにも障害のある子が優先になってしまうのが日々の現実です。旅行にも制約があり、親の時間が取れないせいで、友達と外で遊んだり家に呼んだりという「普通の子ども時間」を十分に作れていない、と感じることがあります。
この記事では、きょうだい児が抱えやすい気持ちを整理したうえで、わが家が実際にぶつかっている制約と、そこで意識している工夫、そして親だけで抱えないための支援サービス・相談先までをまとめます。「完璧にできている家庭の話」ではなく、同じところで悩んでいる立場からの整理です。
- きょうだい児とは?
- きょうだい児が抱えやすい4つの気持ち
- わが家で起きているリアルな制約
- 親ができる関わり方5つ
- 「家の外」に時間を作る工夫
- 親が抱え込まないために使える支援
- きょうだい児本人が相談できる場所
- よくある質問
- まとめ|「平等」より「その子だけの時間」
きょうだい児とは?
きょうだい児とは、障害や病気のある子どもの兄弟姉妹を指す言葉です。ひらがなで「きょうだい」と書くのは、兄・姉・弟・妹のどれかに限定せず、性別や年齢の上下を問わない呼び方にするためです。
この言葉が使われるようになった背景には、「支援の目が本人には向くけれど、そのきょうだいには向きにくい」という長年の課題があります。障害のある子には手帳・手当・療育・放課後等デイサービスといった支援の仕組みがありますが、きょうだいには、制度としての受け皿がほとんどありません。
結果として、きょうだい児のケアは家庭の中だけの問題になりやすく、親が気づかないうちに我慢が積み重なっていく——というのが、よく指摘される構造です。
▶ 障害のある子の診断がつくまでの経緯は、こちらにまとめています:発達障害の診断がつくまでの流れ|1歳半健診で指摘されてからのこと
きょうだい児が抱えやすい4つの気持ち
きょうだい児の支援に関する情報では、次のような気持ちがよく挙げられます。もちろん全員がこうなるわけではありませんが、「起こりうること」として知っておくと、日々の声かけが変わります。
| 気持ち | あらわれ方の例 |
|---|---|
| ① 我慢・遠慮 | 「言っても無理だろう」と最初から要望を言わなくなる。ワガママを言わない“いい子”になる |
| ② 親を独占できない寂しさ | 親の関心が常に障害のある子に向いていると感じる。体調不良や困りごとを言い出しにくい |
| ③ 説明できないもどかしさ | 友達に兄弟姉妹のことをどう話せばいいか分からない。からかわれた経験を親に言えない |
| ④ 将来への不安 | 「親が亡くなったら自分が面倒をみるのか」と、かなり早い年齢から考えてしまう |
特に④は、親が思っているよりずっと早い時期に、子ども自身が一人で考え始めていることがあります。将来の見通し(お金・住まい・支援の担い手)については、親が元気なうちに情報として整理しておくことが、そのままきょうだい児の安心につながります。
わが家で起きているリアルな制約
ここからは、わが家で実際に起きていることを書きます。きれいごとではなく、日常の中で「これはきょうだいに申し訳ないな」と感じている場面です。
何をするにも障害のある子が優先になる
予定を決めるとき、判断の起点はいつも障害のある子です。通院・療育・体調・その日の様子。それに合わせて動くので、きょうだいの「今日これがやりたい」は自然と後回しになります。悪気があるわけではなく、そうしないと家庭が回らない、というのが実際のところです。
旅行に制約がある
旅行は行き先そのものが限られます。移動時間、宿の設備、混雑、食事の好み——条件を満たす場所を探すうちに、「きょうだいが行きたい場所」より「障害のある子が過ごせる場所」が優先されます。行き先の候補が最初から狭い、というのがきょうだい児にとっての制約です。
外食が大変
外食も気軽ではありません。席の位置、待ち時間、周囲の目。「今日は外で食べようか」がハードルの高い提案になるので、きょうだいにとっては当たり前の楽しみが当たり前ではなくなります。
友達と遊ぶ時間を作りにくい
これがいちばん申し訳なく感じている部分です。親の手が空かないため、外に遊びに行く付き添いも、友達を家に呼ぶことも、簡単ではありません。家に呼べば障害のある子への配慮が必要になり、外に送り出そうにも親が動けない。子どもの交友関係は、親の時間の余裕にかなり左右されるのだと痛感しています。
ここまで書いたことに共通しているのは、きょうだい児の我慢は「性格」ではなく「家庭の構造」から生まれているということです。だからこそ、本人に頑張らせるのではなく、家庭の仕組みのほうを変える発想が必要になります。
親ができる関わり方5つ
① 1対1の時間を、短くてもいいから作る
きょうだい支援でもっともよく言われるのが、「その子だけの時間」を意図的に確保することです。長時間である必要はなく、買い物に一緒に行く、寝る前の10分だけ二人で話す、といった短い時間でもかまいません。大切なのは「たまたま空いた時間」ではなく、予定として決めておくことです。空いたらやろう、では永遠に順番が回ってこないからです。
② 障害のことを、年齢に合わせて説明する
「まだ分からないだろう」と説明を先送りすると、子どもは自分なりの想像で埋めてしまいます。「自分のせいかもしれない」「うつるかもしれない」といった誤解を持つこともあります。年齢に合わせた言葉で、事実として淡々と伝えるほうが、本人は落ち着きます。
③ 「お手伝い」を当たり前にしない
きょうだいが自然に手伝ってくれるのは本当にありがたいことですが、それが「役割」として固定されると負担になります。頼んだときはきちんとお礼を言う、断る自由を残す、当然のこととして扱わない。この線引きが、ヤングケアラー化を防ぐポイントでもあります。
④ ネガティブな気持ちを否定しない
「うるさい」「一緒に出かけたくない」といった言葉が出たとき、反射的に叱りたくなります。でも、それを毎回否定されると、子どもは本音を言わなくなります。まず受け止めてから話す——順番を変えるだけで、話してくれる量が変わります。
⑤ 将来のことを、親が先に整理しておく
「親亡きあと」の問題を、子どもに背負わせないための最大の準備は、親が先に情報を持っておくことです。お金の見通し、住まいの選択肢、成年後見などの仕組みを親が把握していれば、「大丈夫、こういう仕組みがあるよ」と言葉にして伝えられます。
「家の外」に時間を作る工夫
わが家がいま意識しているのが、きょうだいが「家の外」で過ごせる時間を意図的に作ることです。家の中は、どうしても障害のある子中心の空間になります。それ自体を変えるのは難しいので、外に居場所を持ってもらう発想に切り替えました。
- 習い事…週1回でも、親の付き添いが前提でない場所に自分の時間ができる。友達関係が家庭の事情に左右されにくいのも利点
- 学童・放課後の居場所…同年代と過ごす時間が確保でき、親のスケジュールに縛られにくい
- 祖父母・親戚の家…短時間でも「自分だけが大事にされる時間」になりやすい
- きょうだい向けの集まり(きょうだい会)…同じ立場の子と出会える。後述します
ポイントは、親の余裕がなくても継続できる形を選ぶことです。毎回親の送迎と付き添いが必要な活動は、結局続かず、子どもに「やっぱりダメだった」という体験を残してしまいます。送迎の負担が小さいもの、曜日が固定のものから試すのがおすすめです。
親が抱え込まないために使える支援
きょうだい児に時間を割くには、親の手を空ける必要があります。そのために使えるのが、障害のある子のほうの福祉サービスです。「きょうだいのために使う」と考えると気が引けるかもしれませんが、家庭全体を支えるための制度なので、遠慮なく使って問題ありません。
| サービス | できること | きょうだい児にとっての意味 |
|---|---|---|
| 短期入所(ショートステイ) | 数日単位で施設に宿泊 | きょうだいと出かける・旅行に行く時間が作れる |
| 日中一時支援 | 日中の数時間を預かってもらう | 学校行事や習い事の付き添いに行ける |
| 放課後等デイサービス | 放課後・長期休みの居場所 | 放課後の時間にきょうだいと過ごせる |
| 居宅介護(ヘルパー) | 自宅での介助支援 | 家の中でも手が空く時間ができる |
いずれも利用には受給者証の申請が必要で、支給量(使える日数・時間)は自治体の判断で決まります。サービスの全体像は、こちらの記事にまとめています。
また、親の働き方そのものを変えて時間を作るという方向もあります。片方が時短勤務になるだけでも、平日の動ける時間はかなり変わります。
▶ 関連記事:障害児の親の働き方4つの選択肢|時短転職・在宅・辞める前に知っておきたいこと
旅行の制約をやわらげるには
「行ける場所が限られる」問題は、宿の設備で解決できる部分があります。バリアフリールームや、部屋食・貸切風呂のある宿を選べば、周囲を気にせず過ごせるぶん、きょうだいも「気を遣わなくていい旅行」ができます。障害のある子の条件をクリアする宿を先に押さえてから、行き先の楽しみをきょうだいに選んでもらう、という順番がわが家には合っていました。
家族全員が気を遣わずに泊まれる宿を探す
部屋食・貸切風呂・バリアフリールームのある宿なら、周囲の目を気にせず過ごせます。こうした部屋は数が少ないので、日程が決まったら早めの確保が安心です。
具体的な宿の候補は、都道府県別にまとめた記事があります。
きょうだい児本人が相談できる場所
家庭の中だけで抱えず、同じ立場の子と出会える場につなぐという方法もあります。「自分だけじゃなかった」と知ることは、親からの言葉以上に効くことがあります。
- きょうだい会・きょうだいの集い…病気や障害のある子のきょうだいが集まる場。地域の親の会や患者会が開いていることがあります
- 支援団体の活動…病気のある子どものきょうだいを支援するNPO法人しぶたねなど、きょうだい支援を専門に行う団体があります
- 相談支援事業所…受給者証の相談窓口ですが、家庭全体の困りごととして相談できます
- 学校のスクールカウンセラー…きょうだい児本人が学校で話せる相手として現実的な選択肢です
近くに集まりがない地域も多いので、まずは相談支援専門員や自治体の障害福祉窓口に「きょうだいのケアも相談したい」と言ってみるのが入口になります。
よくある質問
Q. きょうだい児と障害のある子、どちらを優先すべきですか?
どちらか一方を選ぶ発想ではなく、「安全に関わることは障害のある子を優先し、それ以外はきょうだいの時間を先に予定として入れる」という分け方が現実的です。緊急性のある対応はどうしても障害のある子が先になりますが、その分、日常の中に「きょうだいだけの時間」をあらかじめ組み込んでおくと、後回しが常態化しにくくなります。空いた時間にやろうとすると、その時間は永遠に来ません。
Q. 障害のことを、きょうだいにどう説明すればいいですか?
年齢に合わせて、事実を淡々と伝えるのが基本です。小さいうちは「〇〇は話すのがゆっくりなんだよ」といった具体的な特徴の説明で十分で、診断名を必ず伝える必要はありません。大切なのは「あなたのせいではない」「うつるものではない」という誤解を早めに解いておくことと、一度で説明を終わらせず、成長に合わせて話し直すことです。
Q. きょうだいにお世話を手伝ってもらうのはよくないことですか?
手伝うこと自体が悪いわけではありません。問題になるのは、それが「断れない役割」として固定され、年齢に見合わない負担になったときです。学校生活や友達付き合いに影響が出ている、本人が疲れている、といったサインがあれば、外部サービスに置き換える検討をしてください。この状態が続くと、いわゆるヤングケアラーの問題につながります。詳しくはヤングケアラーとは?障害のあるきょうだいをケアする子どもと家族への支援にまとめています。
Q. 「将来この子の面倒をみるの?」と聞かれたら何と答えればいいですか?
「あなたが全部やるわけではない」とはっきり伝えたうえで、グループホームや入所施設、成年後見制度など、家族以外が支える仕組みがあることを具体的に伝えるのが安心につながります。曖昧に濁すと、子どもは最悪の想定で考えてしまいます。親自身が制度を把握しておくことが、そのまま回答の準備になります。
まとめ|「平等」より「その子だけの時間」
- きょうだい児の我慢は性格ではなく、家庭の構造から生まれるもの。本人に頑張らせて解決しない
- 抱えやすいのは我慢・寂しさ・説明できないもどかしさ・将来への不安の4つ
- 対策の柱は「1対1の時間を予定として確保する」「家の外に居場所を作る」の2つ
- そのためには短期入所・日中一時支援などで親の手を空けるのが近道。遠慮せず使ってよい制度です
- 将来の不安には、親が先に制度を知って具体的に答えられる状態を作っておく
きょうだいに使える時間を、すべての家庭が十分に取れるわけではありません。わが家も取れていません。それでも、「短くてもいいから、その子だけの時間を予定に入れる」ことと、「家の外に自分の居場所を持ってもらう」ことは、余裕がない中でもできる工夫でした。
完璧な配分を目指すと親のほうが先に潰れます。使える制度を使って手を空けながら、少しずつでいいのだと思います。
※制度・金額に関するご注意
本記事に記載の金額や制度内容は、執筆・更新時点の情報です。金額・条件は年度やお住まいの自治体により異なる場合があります。最新の情報は必ずお住まいの市区町村の窓口や公式サイトでご確認ください。